卵胞期に鍛える「睡眠力」がメラトニンリズムの鍵【女性シフトワーカーのための「自間」の使い方④】

連載「女性シフトワーカーのための「自間」の使い方」第3回に続き、今回も、女性たちの体調の悩みの一つである月経前症候群(PMS)を取り上げます。ベスリクリニック睡眠外来の菅原洋平先生にうかがったところ、PMSに悩まされている女性の睡眠には、ある共通点があるのだそうです。

■月経前症候群(PMS)に悩まされる人の特徴とは?

睡眠外来をしていると、PMSで悩まされてしまう人とそうでない人にはある違いがあります。PMSで悩む人の特徴、それは「体調が良いときに、体調が悪いときの挽回をしようと考える」ことです。

月経前はだるくて頭も痛く、自分のことを「使い物にならない」と感じてしまう。その罪悪感から、調子が戻ったら何とか挽回しようと残業をしたり、部屋の片づけなどやれなかったことを頑張ろうとする。すると体調が良いときが睡眠不足になります。体調がいいときに睡眠不足になったり睡眠のリズムが乱れると、睡眠の基礎となるリズムが弱く崩れやすくなってしまうのです。

■体調のいい時の「睡眠強化週間」で不調を遠ざけよう

睡眠のリズムの強さとは、“振幅”の強さです。メリハリのあるリズムができていれば乱れてもすぐに元に戻ります。例えば、睡眠の周期を決めるメラトニン。夜、光を浴びると減ってしまいますが、PMSの人は排卵周期全体でメラトニンが減少していることが知られています。PMSで寝つきが悪いと夜部屋を明るくしたまま過ごしがちですが、明るい光でメラトニンがますます減少する悪循環に。夜ぐっすり眠り、朝シャキッと目覚める。そのメリハリがなくなると、体調が回復するはずの卵胞期になっても調子が優れなくなってしまいます。

ここで考え方を変えてみましょう。人間の体は調子が良いときに鍛えるほど全体の力が上がって、調子が悪くなることが減ります。体調が悪くなってから対処して、体調が良くなったら挽回する。そんな考えでは、いっこうに体調は良くなりません。体調が良いときほど睡眠の力を鍛えておくのです。そこで、月経後の卵胞期に差しかかったら、その1週間は「睡眠強化週間」にしてみましょう。朝と夜を脳にしっかり伝えて、メラトニンのリズムを強化します。

■睡眠の力を鍛えるメラトニンリズムの整え方

まず夜にリビングで過ごしている時、5分でも10分でもいいので、部屋の照明を消して真っ暗の時間をつくってみましょう。音楽鑑賞やストレッチなど目を使わずに済む時間を使って脳に「夜」を知らせます(はっきり暗くするほどリズムを作りやすいです)。真っ暗のまま過ごせればよりよいですが、慣れないうちは、真っ暗にした後は照明をつけて明るくしても大丈夫です。

そして朝は目覚めたらできるだけ早く窓から1m以内に入りましょう。脳に光を届けてメラトニンを減らし、メラトニンリズムのメリハリをつけます。体調が悪い月経前には無理をしないで、体調がいいときにリズムを強化すると、結果的に月経前のつらい症状は軽くなっていきます。

メラトニンリズムをサポートして、辛いPMSにさよならしましょう。

メラトニンリズムの整え方

【関連記事】ペースマネジメントを身につけよう【女性シフトワーカーのための「自間」の使い方①】

【関連記事】「累積睡眠量」を増やして疲れやイライラを解消【女性シフトワーカーのための「自間」の使い方②】

【関連記事】月経前症候群(PMS)を睡眠から考える【女性シフトワーカーのための「自間」の使い方③】

執筆・監修:菅原洋平

菅原洋平

菅原洋平Yohei Sugawara

記事一覧

作業療法士・ユークロニア株式会社 代表 / ベスリクリニック睡眠外来担当
国際医療福祉大学卒業後、作業療法士免許を取得。国立病院機構で脳のリハビリに従事後、睡眠改善をもとにした健康や人材開発のコンサルティングを行なうユークロニア(株)を設立。ベスリクリニック(東京都千代田区)で臨床も行っている。著書『脳にいい24時間の使い方』(フォレスト出版)他多数。雑誌、テレビでも注目を集める。

関連記事