デジアイ症候群にならないために。スマホとの付き合い方を見直そう

オフラボで現代女性のストレスについて分析をすると、かなり高い頻度で登場するのが「デジタル依存ストレス」と「視覚ストレス」です。ひと昔前だったら、電車で座っている人は眠っているか、本や雑誌を読んでいるか。でも今は、ずらりと横一列全員がスマホなんていう光景も珍しくありません。心掛けたいのは、頻度や時間をマネジメントして使用すること。そして、日常でうまくストレスオフすることも大切です。

■スマホの普及で注目を集めるVDT症候群

日常でインターネットやデジタルツールが便利に使えるようになった現代社会。中でもスマホは、iPhoneが登場した2010年以降瞬く間に所有率が増え、今やパソコンをしのぐ勢い。「平成28 年通信動向調査」では、70%以上の人がスマホ所有者であるという結果が出ています。ちょっと気になったことがあればすぐに調べられるし、おいしいと評判のレストランも簡単に見つけられるし、毎日の快適さや楽しさの助けになっていることは言うまでもありません。しかし一方で、ひとつの現代病が問題になっています。「VDT(Visual Display Terminal)症候群」です。

主な情報通信機器の保有状況(世帯)

出典:平成28年通信利用動向調査の結果(総務省)より一部改変

「VDT症候群」とは、パソコン作業やスマホ操作で目を酷使して起こる疲れ目や乾燥、あるいは疲れ目により肩こりなど心身の不調を併発する眼精疲労の状態を言います。思い当たる方、きっとたくさんいるでしょう。このような状況を受けて、2002年には、厚生労働省が「VDT作業における労働衛生管理のためのガイドライン」を策定しています。これは働く人の労働環境や健康を守るためのものですが、専業主婦であっても、学生であっても、デジタルツールの過剰な使用は、同様に健康の害に。目薬で日本人の目の健康をサポートしてきたロート製薬株式会社では、VDT症候群を一般にわかりやすく広めるため「デジアイ症候群」と命名しています。

■テレビより、PCよりもスマホに注意したい理由

さて、PCやスマホと同じように目を酷使するものとしてはテレビなども挙げられますが、中でも特に注意したいのがスマホの使用です。いつでもどこでも使え、おのずと使用時間が長くなることはもちろんですが、それ以外にもいくつか理由があります。

▼距離の近さ
テレビなら1メートル以上、PCでも50センチ程度はディスプレイとの距離がありますが、手で持って操作するスマホは20センチ程度とぐっと近くなります。ゲームなどに熱中していると、まさに画面に食い入るように、その距離はもっと近づくことでしょう。「疲れ目」とはピント調節を担う毛様体筋が筋肉疲労を起こしている状態ですが、見る対象との距離が近くなればなるほど筋肉は収縮。疲労度が増すのです。

【関連記事】現代女性の五感ストレス第1位は「視覚」!まずは疲れ目について学ぼう

▼まばたきの減少
目は、油分や水分などいくつかの層からなる涙で守られています。まばたきには、涙腺から分泌される涙を目の表面に行き届かせるという役割がありますが、スマホに熱中していると1分間に平均20回のまばたきが、5回程度までに減少してしまうのです。これが「ドライアイ」の大きな要因です。

▼ブルーライトの影響
ブルーライトは、可視光線の中でもっともエネルギーが強い光。角膜や水晶体で吸収されずに網膜まで到達するほどのパワーを持ち、さらに波長が短く光が散乱しやすいため、時に「まぶしい」と感じたり、像がぼやけたりします。下の図でわかるように、同じようにブルーライトを発するデバイスの中でも、スマホは最多! 紙からはブルーライトは発生しませんから、電車の中でスマホに熱中するのと文庫本を読むのでは、実は目の疲れ方に大きな違いがあるのです。

デジタル機器ごとの波長の比較

出典:ブルーライト研究会

■デジアイ対策でデジタルライフを快適に

スマホに限らず、何ごとも“程よい距離”は大切です。最後にデジアイ症候群にならないために心掛けたいことや、簡単に実践できる疲れ目対策をご紹介しましょう。

▼ベッドにスマホを持ち込まない
ブルーライトは太陽光にも含まれており、眠る前に浴びると体が「夜」を認識できず、眠りに必要な物質であるメラトニンが分泌されにくくなります。睡眠の質の低下を招くため、布団に入ってからのスマホ操作は控えましょう。

▼ブルーライトカットフィルム・眼鏡の活用
PCやスマホ画面に貼り付けてブルーライトをカットするフィルムや、ブルーライトカット機能のあるレンズ入りの眼鏡などを使うのもおすすめです。フィルムで平均30パーセント程度、眼鏡では50パーセント程度カットできるものもあるようです。

▼「遠くを見る」「温める」など疲れ目対策
PCやスマホで目の疲れを感じたら、そのままにせず、疲れを癒やすことも大切です。張り詰めた目の筋肉を緩めるために、数分でもぼーっと遠くを見たり、目を閉じて休めたり。温めると血行がよくなり疲れが取れやすくなるので、鼻の頭の付け根をきゅっとつまんでツボを刺激したり、温かくなるアイマスクもいいですね。目薬にも、デジアイ対策機能を備えたものが多数発売されています。

便利で快適なデジタルライフも、健康でなければ楽しめません。疲れ目や、眼精疲労から心身の不調を招かないためにも、スマホとの付き合い方を意識してみませんか?

【関連記事】目薬、使ってますか?わずか1滴に込められた奥深い世界

取材・執筆:オフラボSTAFF 監修:植松由起

植松由起

ロート製薬株式会社 東京学術チームリーダー
薬剤師。化粧品から医薬品まで幅広い知識を持ち、ロート製薬の研究成果を、わかりやすい言葉やアプローチで売り場へとつなぐエキスパート。美容と健康をトータルで提案できるドラッグストア販売員教育などを行っている。数あるアイテムの中でも眼に関する知識が豊富で、雑誌やお客様向けセミナーなどでも幅広く活躍。

関連記事