人生に健康と幸せをもたらす「噛むこと」の大切さ

「食べる」は生きるために欠かせない行為ですが、栄養を摂るだけならばサプリや点滴などだけでも可能なわけで。しかしそれだけでなく、食べることは、人を幸せな気持ちにさせてくれる行為でもあります。好きなもの、おいしいものを食べた時のあの幸福感といったら! 今回は、そんな「食べる」と密接な「噛むこと」のお話。株式会社ロッテの「噛むこと研究室」に取材しました。

■食べられない=生命の危機!

歯茎の腫れや、むし歯などの口腔トラブルが起こると、普段通りには食べられなくなります。その痛みやつらさたるや……! まさに身体的ストレスの代表例ですが、それだけでなく「食べたい」という欲求が満たされないこともストレス要因になり、まさに二重苦と言っていいでしょう。
こういった口腔トラブルによる「食べられない」は、「噛めない」ことにより起こります。人は歯が生えてから人生でずっとかみ続けているわけですが、物を口に入れるたびに意識せずに繰り返している行為であり、「噛むこと」をしっかり意識できている人は少ないのではないでしょうか。
しかし、咀嚼は実はとても重要な行為。キーワードは、近年話題の“健康寿命”です。

日本では当時の厚生省(現・厚生労働省)と日本歯科医師会により、1989年から「8020(ハチマルニイマル)運動」が提唱されています。これは「80歳になっても自分の歯を20本以上保とう」という運動で、スタートした当初、達成者はわずか数%にすぎませんでしたが、30年を経過した今は50%を超えるほどに。近年ではさらに意識を高めるべく、歯だけでなく口腔全体の健康に目を向けた「オーラルフレイル」の予防が推進されています。これらの運動が起こったのには、体のほんの小さなパーツに過ぎない歯や噛むことが、全身の健康に深く大きく関わっているからなのです。その影響は多岐に渡りますが、その内のいくつかをご紹介しましょう。

「噛むこと」の健康効果

【噛むこと効果①】 脳を活性化
近年の研究により、「噛むこと」のさまざまな効果が実証され始めています。中でもオフラボが注目したのは、脳への影響です。記憶力や集中力の向上、そしてストレスにもいい影響が。噛むことはリズム運動にもなり、セロトニン分泌を促せる可能性が示唆されています。

【噛むこと効果②】 筋力がアップする
試しに、口を動かして噛む真似をしてみてください。顎の筋肉だけでなく、首まわりの筋肉も一緒に動くのがわかるでしょう。しっかり噛むことで、体を支える筋力がアップ。また顔の複雑な表情を作り出す表情筋にも刺激を与えます。

【噛むこと効果③】 胃腸の負担を減らす
近年、「胃腸の元気が体の元気」と言われるほど、胃腸に注目が集まっています。食べ物を消化するためには大きなエネルギーを要しますが、細かく噛みくだくことで消化しやすくなり、胃腸の負担を減らすことに。また、よく噛んで食べると満腹感が増すため、生活習慣病である肥満の防止にもなります。

■「口を閉じて、奥歯ですり潰す」が正しい噛み方

さて、さっそく次の食事から噛むことを意識したいものですが、実は「正しい噛み方」があります。ポイントは、前歯で噛む(チョッピング)だけでなく、奥歯でしっかりすり潰す(グラインド)こと。そのためには、唇を閉じて、舌で食べ物を奥に送る必要があります。やってみるとわかりますが、口を閉じないで食べると前歯で噛むことになり、奥歯でしっかりすり潰すことができません。
また前述したように、よく噛むこと(すり潰すこと)も心がけたいものですが、「ひと口30回」を目標にと言っても、実際は難しいと感じる人が多いでしょう。もっと簡単なのは、ひと口の量を減らすことです。口に運ぶ回数を増やすことで、噛む回数をかせぐ作戦です。一度にたくさん口の中に詰め込むと、嚥下反射が起こりすぐに飲み込んでしまうことからも、少量ずつ食べることをおすすめします。

■次の食事から、スマホはバッグの中へ

現代食は柔らかいものが多く、噛むことがおろそかになっているとよく言われます。さらに近年は、スマホの登場により“ながら食べ”している人も多く見かけるように。食べることにまったく集中していないことで、噛むことはより無意識になり、「味わう」ことすらも失われつつあります。
思い当たる人は、次の食事から、まずはスマホをバッグの中に。噛むことを意識し、味わって食べることで、幸福感も健康も、今よりもっと豊かになるはずです。

取材・執筆:オフラボSTAFF 監修:噛むこと研究室

噛むこと研究室

株式会社ロッテ
1948年の創業以来ガムをつくり続け、“噛むこと”に取り組んできた株式会社ロッテが発足した「噛むこと研究室」では、さまざまな研究機関や企業と連携し、最適な“噛む”を提供することで、社会に貢献。 “噛むこと”で認知症に備える、アスリートのパフォーマンス向上に貢献するなどを目指し、研究・活動に取り組んでいる

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