まずは“思い込み”から解放されることから。ストレスを味方にするポジティブ脳の作り方

米国ナショナル・ヘルス・インタビュー・サーベイの興味深いデータが近年話題です。1998年に3万人の成人に行った調査で「1年間でどれくらいストレスを感じたか」「ストレスは健康に悪いか」と質問し、8年間に渡り追跡調査しました。その結果43%の人の死亡リスクが高まっていたことがわかりましたが、該当者は、強いストレス状態にあった中でも「ストレスは健康に悪い」と考えていた人だけだったというのです。

■思い込みストレスから脱却する唯一無二のキーワードは「主体性」

「ようは脳の“思い込み”なんです」そう話すのは、ストレスを人間関係やコミュニケーションから考え、これまで2,7000人以上に独自の研修を行ってきた一般社団法人日本ナンバーワントレーナー協会・代表理事の中澤仁美さん。ちょっと衝撃的な事実ではあるけれど、“思い込み”というひと言で片付けられてしまうなんて……。「この話を聞いて、『ガクッ!』と拍子抜けして、ちょっと笑えてしまえる人は大丈夫。『ストレスで死ぬ』が本当だと思っている人は笑えません。いわゆる取り越し苦労によってストレスという名の荷物がどんどん増えてしまうのです」(中澤さん)。

ではストレスに振りまわされないためにどうしたらいいか? 脳の思い込みでネガティブスパイラルに陥ってしまうならば、逆もあり。“振りまわされている”ことが問題なのだから、軸足をしっかり「自分」に置いて、主体的に物事を考えるポジティブ脳にクセづけしてしまえばいいのです。

■攻撃性の強い人ほど、ポジ変できたときの喜びは大きい

「部下や子どもが思い通りに動かなくて怒りが爆発!」は、相手の言動に振り回されてしまっている典型的なパターンです。「やらないのは相手がなまけているから」という思い込みを捨て、「やってもらいたいと思っているのは自分。どうしたら相手が思い通りに動いてくれるのか?」を考えてみる。ここまで読んで、勘のいい方ならお気づきでしょう。考え方とプロセスが違うだけで、「自分の思い通りにことを運ぶ」ゴールは変わっていません。

中澤さんが行ってるリーダー向けの研修では、この「主体的に物事を考える」を、ゲーム形式で実践し徹底的に身につけてもらうそう。「ありがとう」なんて言ったことのない人が、初めて素直に感謝の気持ちを表せるようになった、変われた喜び。「ありがとう」と伝えたことで笑顔を向けられる喜びを想像してみてください。普段は眉間にシワを寄せ、部下から(あるいは家族から)手が焼けると思われている人ほど、研修後にがらりと変わることも珍しくないのだとか。

■自分の人生のハンドルは自分で握る

そういえば、あるセミナー内で椅子ヨガ体験があったとき、一番熱心に取り組んでいたのは、意外にも中高年の男性たちでした。「元来、人は楽しむ生きもの。遊び感覚で何かに取り組んだり、新しい気付きを得たりすることは、いくつになっても、どんな立場であっても喜びなんです」(中澤さん)。

話を最初に戻しましょう。ストレスの捉え方も、視点次第でいかようにも変わります。実態のないストレスの影におびえながら生きるのではなく、感じた時には己と向き合い、またやる気が出ない時にはストレスの緊張感を利用して。人生という名のドライブのハンドルを握っているのは、自分自身なのですから。

取材・執筆:オフラボSTAFF 監修:中澤仁美

中澤仁美

中澤仁美Hitomi Nakazawa

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一般社団法人日本ナンバーワントレーナー協会代表理事
独自のヒアリング方法で組織・人材に適した完全参加型プログラムを開発・提供。上場企業からベンチャー企業まで、参加者は延べ2,7000人以上にのぼる。日本大学藝術学部にてソーシャルデザイン講師、都立高校11校にてキャリアデザイン講義を担当。近著は『部下のやる気を引き出す「リーダー」のチェックボックス』(明日香出版社)。

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