ストレスフルな看護師の働き方改革。“コミュニケーションの環境整備”を見過ごさないで

時間が不規則だったり、体力的、あるいは精神的な負荷が大きかったり。ストレスを多く抱えがちなシフトワーカーですが、中でも人命に関わる緊張感が重大な看護師は、人手不足による過重労働も深刻な問題となっています。でも、それだけではありません。時間や待遇に比べて話題になることは多くはありませんが、年代性別を問わずストレス要因No.1の「人間関係」は、看護師の働きがいにも大きな影響をもたらしています。

■5割近くの看護師が高いストレス状態に

厚生労働省が発表した平成28年「衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」によると、人口10万人当たりの看護師数は全国平均で905.5人ですが、埼玉県 では636.8人と最も少なく、次いで千葉県673.5人、神奈川県686.6人など、13都府県で平均を下回っています。
ストレス状況を見ても、全国7万人の女性に行っているオフラボの「ココロの体力測定2017」調査では、介護士や保育士と並び、女性看護師(914人)の高ストレス者割合は女性全体よりも高く、高ストレス者予備軍との合算では44.6%と5割近くが高いストレス状態にあることがわかっています。

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女性看護師・介護士・保育士のストレスレベル分布

■仕事の大変さよりも……不満は意外なところに

働き方改革が進む中、看護師の労働環境や待遇の見直しはじめている病院も多数ありますが、「あまり語られませんが、職場の人間関係に悩みを抱えている看護師さんが圧倒的に多いんです」そう話すのは、上場企業からクリエイティブ職まで延べ27,000人以上にコミュニケーションプログラムを提供してきた、一般社団法人日本ナンバーワントレーナー協会・代表理事の中澤仁美さん。近年、「看護師たちの元気がない」と、医療機関の経営者からの依頼が増えているそう。

看護職に就く人は奉仕の気持ちに溢れています。これは愛情ホルモン・オキシトシンのもう一つの側面と言え、どんなに仕事がきつくても、それに耐えかねて辞めてしまう人は実は少ないのだとか。その大きな支えになっているのは、「自分は必要とされている」と存在意義を実感できる、患者さんからの感謝の言葉。でも例えば医師との関係となると、どうでしょうか。本来は専門職としてフェアな関係であるべきですが、上司と部下のような関係になりがちに。医師から看護師への依頼はトップダウンで、それに対する「ありがとう」の言葉もなかなか出てこない……。
中澤さんが病院で行う研修では病院内の“コミュニケーション”に焦点を当て、看護師だけでなく、医師の参加が必須。看護師の職場ストレスは、本人の努力以前に病院という組織全体の問題として捉えなければ解決しないのです。

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■看護師たちを取り巻く周囲の意識改革を

オフラボでは、ストレスに対する耐性を高めるためには、睡眠や食生活などの生活習慣でストレスオフなココロの体力作りを心がけることが大切であると考えています。
でも、自然災害しかり、環境変化しかり、避けようのないストレスは必ずあるもの。不意に他人から投げかけられる言動もそうです。1度や2度ならまだしも、毎日のように浴びせ続けられればストレスは疲労症状を伴って蓄積してきます。

白衣の天使と例えられるように、奉仕の気持ちや使命感に溢れた看護師は自らのキャパシティ以上に受け入れてしまうためよりストレスを溜めがちですが、一般企業や家庭でも同じことは起こります。いきいきと過ごせていない人が身近にいたら、オフラボの読者の皆さんはたくさんのアドバイスをすることができるでしょう。でもその人自身のストレスオフな行動を促すだけでなく「威圧的な言動をしていないか?」「謙虚さを持ち、感謝を言葉で伝えているか?」と、自らを振り返ることも大切。働き方改革では時間やお金に焦点があたりがちですが、一人ひとりのコミュニケーション意識の向上を促す、“コミュニケーションの環境整備”、組織やチームで取り組んでみてはいかがでしょうか。

取材・執筆:オフラボ 監修:中澤仁美

中澤仁美

中澤仁美Hitomi Nakazawa

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一般社団法人日本ナンバーワントレーナー協会代表理事
独自のヒアリング方法で組織・人材に適した完全参加型プログラムを開発・提供。上場企業からベンチャー企業まで、参加者は延べ2,7000人以上にのぼる。日本大学藝術学部にてソーシャルデザイン講師、都立高校11校にてキャリアデザイン講義を担当。近著は『部下のやる気を引き出す「リーダー」のチェックボックス』(明日香出版社)。

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