目薬、使ってますか?わずか1滴に込められた奥深い世界

12種類以内と限られた数の有効成分を、決められた容量の中で繊細に、緻密に配合した目薬の“1滴”には、スマホやPC、これからの季節に気になる紫外線などによる視覚ストレス対策にも有効なものがたくさんあります。そこで、より効果的に使うための選び方やさし方を、ロート製薬株式会社の植松由起さんに教えてもらいました。

■その種類は200種類以上!日本人は目薬好き?

ドラッグストアに行くと、棚一杯にずらりと並んでいる目薬。都内某所の店舗でざっと数えただけでも50数種類、ウェブストアには、何と200種類以上も! 子ども用、中高年向け、コンタクト用や花粉対策、そして最近ではスマホやPCによるデジタルストレス対策まで。市販薬としてこれだけ種類があるのは、世界的に見ても日本ならではのようです。

さらに、ロート製薬株式会社(以下、ロート製薬)が20~60代の男女を対象に目薬の利用頻度を調べた調査によると、「毎日使用している」人は、およそ3割。頻度を問わず「使用している」まで含めると、実に6割以上が目薬を使っていることになります。また23項目から「目薬の利用シーン」をきくと、全世代で一番多かった「スマホやPC疲れを改善」29%をはじめ、「花粉の時期の目のかゆみを抑える」19%、「(目にしみない)疲れ目ケア」15%、「運転中、勉強中のリフレッシュ」12%など用途はさまざま。多くの目的やシーンで目薬を利用しており、中にはいくつかの目薬を使い分けている人もいるのではないでしょうか。

20~60代男女の目薬の使用頻度

データ提供:ロート製薬株式会社

■1,000円超えも当たり前。有効成分でベストマッチな1滴を選び抜く

ドラッグストアに目薬を選びに行ったという方、気づきましたか? 近頃目立つのが高価格商品です。1,000円前後は当たり前、中には2,000円に届きそうなものまでありますが、この価格にはきちんと理由があります。配合されている「有効成分」です。医師から処方されたものではなく、ドラッグストアなどで販売されている目薬の多くは「一般用医薬品」とされており、その処方には基準*が定められているものもあります。その一つが、配合できる有効成分の種類(数)。基準内の一般用目薬(以降、目薬)で使用されている主な成分は56種類ありますが、1商品に配合できるのは12種類まで。さらに、成分ごとに最大濃度も決まっています。*一般用眼科用薬製造販売承認基準

「仕事中のPC作業で目が乾く」「花粉で目がかゆい」「コンタクトレンズで目が疲れるし、目がかゆい」などニーズが多様化・複雑化している中、いかにして高い満足をかなえられるかは、「有効成分12種類から、どの成分をいくつ使うか」「最大濃度の範囲内でいかに成分の持つ力を発揮させるか」、そしてこれらを「どんなバランスで配合するか」。理想的な1滴のために、研究・開発の現場ではベストマッチの試行錯誤が続いています。それでは、使う私たちはどう選ぶのが正解でしょうか? 薬剤師さんに相談して買うのがもちろんおすすめですが、一般用目薬は、インターネットなどで気軽に買えるのも便利なところです。有効成分の種類や目的を知っておけば、よりマイ・ベストマッチな1滴が選びやすく。例えば以下は、目のかすみや充血など、さまざまな症状として現れる「疲れ目」に有効な成分です。参考にしてみてください。

【疲れ目に有効な主な成分】
●ピント調節機能の低下(改善剤)・・・ネオスチグミンメチル硫酸塩 など
●栄養不足(ビタミン、アミノ酸)・・・パンテノール、ビタミンB6、ビタミンE、タウリン、L-アスパラギン酸カリウム など
●充血(血管収縮剤)・・・塩酸テトラヒドロゾリン、ナファゾリン塩酸塩 など
●炎症(抗炎症剤)・・・グリチルリチン酸二カリウム、アラントイン、硫酸亜鉛水和物 など
●かゆみ(抗ヒスタミン剤)・・・クロルフェニラミンマレイン酸塩 など
●乾き(角膜保護剤など)・・・コンドロイチン硫酸エステルナトリウム など

■目薬の正しいさし方5つのステップ

最後に、正しい目薬のさし方をご紹介します。使っている方も、この記事を読んで目薬を使ってみようと思った方も、おさらいしておきましょう。

▼STEP 1.まずは手を洗って清潔にする
▼STEP 2.「あっかんべー」するように、下まぶたを引き下げる
▼STEP 3.雑菌が入る恐れがあるため、まつ毛やまぶたに目薬のノズルが触れないように点眼する
▼STEP 4.もう片方の目も同じように行う
▼STEP 5.「涙点」から目薬が鼻へと流れ出すのを防ぐため、目を閉じて軽く目頭を押さえる

病院の処方薬と違い、一般用目薬は清涼感や香りでもストレスオフできる工夫がされています。高価格なものは有効成分だけでなく、メントール成分に上質な精油を使うなど使い心地のクオリティにもこだわっているのだとか。ちょっと高い目薬を買ったら、さした後に、静かに鼻呼吸。何気なく、あるいはあわただしく目薬をさしていた時間が、リラックスタイムに変わりそうですね。

取材・執筆:オフラボSTAFF 監修:植松由起

植松由起

ロート製薬株式会社 東京学術チームリーダー
薬剤師。化粧品から医薬品まで幅広い知識を持ち、ロート製薬の研究成果を、わかりやすい言葉やアプローチで売り場へとつなぐエキスパート。美容と健康をトータルで提案できるドラッグストア販売員教育などを行っている。数あるアイテムの中でも眼に関する知識が豊富で、雑誌やお客様向けセミナーなどでも幅広く活躍。

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