毎日心地よくストレスオフできる方法を見つけよう【女性シフトワーカーのための「自間」の使い方⑤】

オフラボが名づけた“自間ペース”は、自分の時間と空間のペースのこと。看護・介護士やシステムエンジニアなど、自間ペースが乱れがちな女性シフトワーカーのためのストレスオフについて、菅原洋平先生にうかがってきた連載もいよいよ今回が最終回です。限られた休みの日に、普段の健康負債を取り戻そうとあれやこれややりがちですが、そんなに一生懸命がんばらなくても大丈夫、というお話です。

■確実に実行できる「スモールステップ」がストレスオフ習慣の早道

限られた時間で体調に気を配ろうとすると、ますますやることが増えてかえってストレスになることもあります。体にいい習慣であっても、それを無理して行ってはいけません。ストレスオフな生活習慣をつくるコツは、「スモールステップ」です。

例えば、眠る前のスマホがなかなかやめられない。では、ベッドでだけはやらないようにして、それ以外の場所でスマホをする。あるいは、月経前の不調なときは気持ちに任せてフリーにして、月経後体調が戻ったら、スマホはベッドの外で使うようにする。こんな風にスモールステップにして“確実にできること”を積み上げていくことが大切です。

■生活習慣は、毎日の「脳の記憶」の痕跡

チャレンジしてはいけないのは、その行動している自分が想像できないことです。私たちの脳は、予測ができないことに対してストレスを感じます。実際にその行動を実行したという記憶がなければ、脳はどうやれば良いか分からず混乱します。確実にできたことを一つずつ記憶に残していけば、その記憶をもとに次の行動を予測することができ、自然に体が動くようになるのです。体調が悪いときほど一発逆転を狙って生活を一新したくなるもの。でも、この考え方でこれまでうまくいったことはないと思います。

生活習慣は毎日の記憶の痕跡です。その記憶をなぞるように行動を命令するのは、あなたの脳です。ですから、あなたが頑張ろうとはしないでください。実行するのはあなたの脳なので、あくまでもあなたの脳が動きやすい環境をつくることに力を注いでみましょう。

■振り子のように、ふり幅が小さく、静かに……睡眠リズムは徐々に改善するもの

また、睡眠のリズムや体調が改善していくときは、右肩上がりでぐんぐん改善することはありません。人間の体には「ホメオスタシス」といって、バランスを保つ原理が備わっています。例えば、眠れずに悩んでいた人の睡眠が改善し始めると、次に昼間に眠くなり過ぎて困ることがよくあります。これは脳が睡眠と覚醒のリズムをつくるときに、これまで覚醒に偏りすぎて眠れなくなっていたところから反対に大きく振れて、睡眠に偏り過ぎているサインです。

振り子のように反対に大きく振れたら、次にはまた眠りにくいリズムがやってきます。ただ、これまでの眠れない様子よりはかなり軽くなります。そしてまた次に眠すぎるリズムがやってきますが、これもまた軽くなります。これを繰り返しながら、脳は睡眠と覚醒の基準を見つけていきます。これが出来上がると、「多少寝つけない日や眠い日があるけどそれで困ることはない」という状態になります。これが改善していく過程です。

改善してきたけどまた眠れなくなったと挫折感を抱いたり、もう二度と睡眠で困らないようになりたいと過度な期待はしないこと。振り子のふり幅が小さく静かになっていくのをイメージして淡々と実行していきましょう。

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執筆・監修:菅原洋平

菅原洋平

菅原洋平Yohei Sugawara

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作業療法士・ユークロニア株式会社 代表 / ベスリクリニック睡眠外来担当
国際医療福祉大学卒業後、作業療法士免許を取得。国立病院機構で脳のリハビリに従事後、睡眠改善をもとにした健康や人材開発のコンサルティングを行なうユークロニア(株)を設立。ベスリクリニック(東京都千代田区)で臨床も行っている。著書『脳にいい24時間の使い方』(フォレスト出版)他多数。雑誌、テレビでも注目を集める。

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