車の渋滞、お盆の帰省、子どもたちの遊び相手など。夏休みはどうしても日常のペースが乱されがちです。休んでいるつもり、気分転換をしているつもりでも、なぜか気持ちが不安定になったり、疲れてしまう。そんな時は自分を責めてしまうこともあるかもしれません。でもこのイライラ、性格や気持ちの問題ではなく、脳の仕組みの問題。作業療法士の菅原洋平先生が教えてくれた回避のための方法は、ちょっと意外なものでした。
■イライラ物質が分泌される前に脳の容量オーバーを回避
イライラは、大抵、脳が何かに集中しているときに起こります。例えば帰省の移動中。混雑の中、駅で新幹線のホームへの行くことに意識を集中させていると、傍らで子どもが売り場におもちゃを見つけて買ってとねだる。こんな場面、イライラしてしますよね。
脳が集中していると疲労でノルアドレナリンの分泌が高まります。そして集中を邪魔する刺激を受けると、イライラを鎮めるためにステロイドホルモンの一種であるコルチゾールの分泌が増えます。コルチゾールは免疫に関係し、体の外からウイルスが侵入したときにそれを駆除するときに作用しますが、精神的なストレスでも同じことが起こるのです。
私たちは「いい加減にしなさい!」と怒鳴ってしまった後で自分がイライラしていることに気づくものですが、それでは遅い。ノルアドレナリンやコルチゾールが分泌されてしまってからその状況を変えることは難しいので、そもそも過剰に分泌されないようにする方が、はるかに簡単にイライラを避けることができます。そこで、普段から自分の脳が容量オーバーにならない状態を工夫してみましょう。
■テレビのつけっ放しだけでも「忙しい」と認識する脳を過剰な情報から守る
脳は基本的に一つのことにしか集中できない仕組みです。特に観たい番組もないのにテレビをつけておいたり、まるでクセのようにスマホの画面を見ていると、脳はとても忙しい状況だと認識してしまいます。こんな時に子どもが脱ぎ捨てた靴下が目に入ったりすると……それだけでイラっとしてしまうのです。
無駄にテレビやスマホを見ないようにするには、使ったら定位置に戻すようにしてみましょう。リモコンを定位置に戻しテーブルに置いておかない。スマホは使ったら充電器に戻して、キッチンや洗面所に置かない。こうすることで、脳を過剰な情報から守ることができます。
■脳も臓器。“脳もたれ”にならないよう情報断食を
これができたら、情報断食をしてみましょう。脳も内臓なので、情報をひたすら見過ぎていると処理が追いつかなくなります。これを胃もたれと同じような状態だと考えて、情報を消化する時間を与えてあげましょう。
まずは午前中の1時間だけでよいので、テレビやスマホなどメディアに触れないようにしてみましょう。すると、洗濯物や洗い物など、やるべきことがすんなり終わることに気づくはずです。普段から脳にマルチタスクを強い過ぎないように心掛けて、いざという時、少々のことではイライラしない余裕をつくれば、ペースが乱されがちな夏休みも怖くありません。
執筆・監修:菅原洋平