仕事と家庭の両立や介護・看護に「がんばり過ぎない」勇気を【ストレス性発熱の処方箋②】

この連載では、ストレスに起因する「心因性(ストレス性)発熱」について、国際医療福祉大学病院の心療内科部長・岡孝和先生にお話をうかがっています。微熱に悩まされたり、高熱が続いたり。本人はとても苦しいのに、風邪と違って体調の悪さが露見しにくいため、周囲からは「なまけている」ようにとられてしまうこともあるつらい症状です。しかし、近年になってようやくストレスが原因で発熱する(体温が上昇する)メカニズムが判明。職場や学校などでも、徐々にストレス性発熱に対する理解が広がってきました。

■ストレスによる発熱は、女性が発症しやすい傾向に

岡先生のもとを訪れる心因性発熱患者は2対1の割合で女性が多く、年代で多いのは30~40代の子育て世代。オフラボが全国7万人の女性に行っているインターネット調査「ココロの体力測定」でも、仕事と家事・育児の両立にがんばっているこの世代の女性たちの高ストレス者割合は30代19.8%、40代17.9%、女性全体の15.5%と比較しても多い傾向です[1]。
さらに近年は、介護・看護が必要な家族がいる女性の心因性発熱も増加しており、老々介護によるシニアの心因性発熱も深刻な状況にあります。

■診断の第一歩は、自らの体調や生活を見つめ直すことから

「風邪薬を飲んでいるのに、一向に熱が引かない」「病院で検査を受けても異常がないと言われる」そんな、原因のよくわからない熱に悩まされるようになったら、まず大きな病院でさらに詳しい検査を受け、本当に身体的な異常がないかを確認することが大切です。それでも原因が特定できない熱の一つが、ストレス性発熱。診断するためには、岡先生いわく、「重要なのは問診です」。

「休息が必要だと分かっているが仕事(家事、学業)を優先してしまう」「体調が悪くても休まない」人は、その無理が発熱と体調不良を長引かせている可能性があります。さらに、熱が出るようになった時期に慢性的あるいは強度なストレスにさらされていれば、心因性発熱の可能性を推測し、適切な治療にあたります。

■心因性発熱の治療には、まず3つの“省エネ”を

心因性発熱の原因は、ストレスです。まず何よりも、原因を特定してストレスを取り除くことが一番の治療です。しかし、人間関係を整理する、職場を変える、引っ越すなどがらりと環境を変えるのは難しいもの。そんな時には、まず以下のことを心掛けることから始めましょう。

▼その日にすることの優先順位を決め、すべてやろうとしない
▼2つ以上のことを同時にやろうとしない。一度に解決しようとしない
▼休むときは、脳を休める(考え過ぎたり、スマホいじりしない)

つまり、ストレス性発熱の人は普段の生活より多くの熱産生、エネルギー消費をしているのですから、不調をきたして当然です。まず日常生活を省エネ運転する工夫をしてみます。

心因性発熱を発症する人の中には、がんばり過ぎな傾向にある人がいます。ちょっと熱っぽいな、ひと休みしたいなといった体の声に耳を傾ける“体感”モードの生き方よりも、「同僚に迷惑をかけたくない」「家族の食事の支度をしなくちゃ」など周囲の要請に応えようとする“社会”モードの生き方になっており、それが病気を長引かせる原因になっていることもあります。岡先生は、患者さんに「あなたの主治医はあなた自身ですよ」とおっしゃるそう。体調に異変を感じたら、その時の体調に合わせて社会モードと体感モードを上手に使い分けること、場合によっては社会や人のためよりも、まずは自分を労わってマイペースを大切に過ごす体感モードの生活を優先することも大切です。

【参考文献】

[1]インターネット調査・株式会社メディプラス研究所「ココロの体力測定2018」(全国7万人、女性、20~68歳)。ストレスレベルは、厚生労働省ストレスチェックB項目を基準に、高ストレス者(77点以上)、低ストレス者(39点以下)を算出。

取材・執筆:オフラボSTAFF 監修:岡孝和

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岡孝和

岡孝和Takakazu Oka

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国際医療福祉大学病院 心療内科部長・医学博士
産業医科大学神経内科講師、九州大学大学院医学研究院心身医学准教授を経て、2017年より現職及び国際医療福祉大学医学部心療内科学主任教授。日本心療内科学会、日本東洋医学会、日本疲労学会会員。ストレスが原因となる「心因性発熱」の臨床・研究における第一人者。治療を求め、日本全国、世界各地から患者が訪れる。

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