ストレスとうまく付き合うための手立てといったら、思い浮かぶのは何でしょうか。がんばれる体力? 強いメンタル? それとも自分がリラックスできる方法を知っていること? すべて正解ですが、その前に。大切だとわかりながらも、気を抜くと崩れてしまう姿勢、実はストレスオフの基本です。
■正しい姿勢とはどんな状態?
立つ、歩く、座る。ヒトは日中、この3つの動作を繰り返して生きていると言っても過言ではありません。これらに共通しているのが、姿勢です。「きちんと立ちなさい」「背中が丸まっているわよ」子どもの頃から言われ続けているにも関わらず、年を重ねてもなお“正しい姿勢”は現代人の課題の一つ。学術的には以下のように言われています[1]。
①力学的視点・・・・バランスよく安定しているか
②生理学的視点・・・疲れにくいか
③心理学的視点・・・気持ちが安定しているか
④作業能率的視点・・動きやすいか
⑤美学的視点・・・・見た目が良いか
この中でも、今回注目したいのが①と②。姿勢が崩れると肩や腰が凝り固まり、疲れやすくなるだけでなく、時に痛みを感じるようになります。この「痛み」は、ストレッサー(ストレス要因)のひとつ。瞬間的な痛みは急性ストレッサー、それが長く続くと慢性ストレッサーとなり、心理的にも影響を及ぼすようになります。
またストレスと深い関係のある自律神経は脊髄から体の各所に分布しているため、背中が丸まったり歪んだりすれば、当然影響を及ぼすわけです。
■ストレスオフ物質セロトニンと姿勢の関係
ヒトの姿勢は、重力に逆らって働く「抗重力筋」によって維持されています。顔から下肢に至るまで全身に位置する筋群で、ストレスオフ物質であるセロトニンは、抗重力筋を活性。セロトニンが減ると抗重力筋に緊張感がなくなって猫背になり、正しい姿勢を保てなくなります。するとコリに繋がり、ひどくなると痛みが発生して心身のストレスに……そんな悪循環が起きてしまうのです。
■筋肉には形状記憶効果がある
実は筋肉は、記憶を保持することができます。簡単に言えば、筋肉の形状記憶効果です。
例えばスーパーでたくさんお買い物をして、重い袋を持ち帰った時。家に着いて袋を下ろしても、持っていた指が丸まったまま戻らなかったり、肘が上がったまま戻らなかったりした経験はありませんか? まさに、瞬間的に指や腕の筋肉が形状記憶してしまった状態です。
姿勢も同じです。瞬間的ないくつかの動作で見違えるほど整いますが、それを長く形状記憶させるためには、日頃からの意識が大切。正しい姿勢を身につけて、心も体もストレスオフな体質を目指しましょう。
(引用)
[1]中村隆一・齋藤宏・長崎浩著(2003).基礎運動学 第6版,医歯薬出版
取材・執筆:オフラボ 監修:小山圭介