なぜ女性は介護・看護ストレスを抱え込んでしまうのか?オキシトシンのもう一つの側面

通称、愛情ホルモンと呼ばれるオキシトシン。今では性別・年齢を問わず分泌されることがわかっていますが、以前は母乳の分泌を促す女性特有のホルモンとして知られていました。親しい人とのスキンシップや楽しい会話で分泌され、ストレスを緩和する働きがありますが、その一方で――“愛情ホルモン”ゆえに、心の負担になってしまうことがあるのです。

■鳥取女性がストレスオフできていなかったこととは?

人を労わり、思いやる気持ち。現代人に欠けがちな絆を育むオキシトシン的な行動は、デジタル化が進み、人と人が顔を見合わせてのコミュニケーションが希薄な今の時代にこそ必要なものです。しかし一方で、深い愛情を抱かせるオキシトシンが、女性の負担になってしまうことがあります。その一例が、2016年のストレスオフ県ランキングで第1位だった鳥取県の調査に表れていました。

他県と比較しストレスオフできている項目の多かった鳥取女性ですが、「家族の病気・世話・介護」に関する項目では、他県と比べてストレスオフできていないという結果に。東京都・大阪府との比較では、鳥取県で家族の世話や介護について高ストレスだった女性は22.7%と東京都の約2倍近くにもなりました。ここに、“愛情ホルモン”と呼ばれるオキシトシンが及ぼすもう一つの側面が出ています。

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家族の病気・世話・介護のストレスレベル 3県調査回答者の割合

■女性の愛情と責任感が、自ら負担を抱え込んでしまうことも

「自分で看てあげたい」「寂しい思いをさせたくない」。オキシトシンがもたらす思いやりの感情が大き過ぎて、外部の方に任せることを避けてしまっている可能性が高く、一人で負担を抱え込んでしまっている可能性があるのです。

今後、日本はさらなる高齢化社会を迎えます。女性の働き方にも注目が集まり、ますますの活躍も期待されています。介護・看護はもちろん、子育てに疲弊せず、自分らしい人生を生きるためにも。身近な周囲や自治体・企業のサポート、そして共倒れにならないための正しい知識と、何より自分の心身にも寄り添う気持ちが大切なのです。

執筆・監修:有田秀穂

有田秀穂

東邦大学名誉教授・医学博士
東邦大学医学部総合生理学で、坐禅とセロトニン神経・前頭前野について研究。各界から注目を集めるセロトニン研究の第一人者。メンタルヘルスケアをマネジメントする「セロトニンDojo」代表。オフラボ顧問。著書『脳からストレスをスッキリ消す事典』(PHPビジュアル実用BOOKS)他多数。

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