ストレスオフな食生活の第一歩は「よくかんで食べること」

「ガマン」や「制限」を意識しすぎることなく、「食べることの幸せ」をきちんと感じることから“ストレスオフな食生活”は始まる――。特にダイエットに敏感な女性たちに向けて、そんなメッセージを送るのは、管理栄養士として4万人以上の食事サポート経験を持つ柏原ゆきよ先生です。では、実際にどんなアクションから始めたらいいのでしょうか。今日からできる、健やかな心と体を保つための“ストレスオフな食生活のポイントを教えてくださいました。

■もともと“異物”の食べ物をやさしく体に取り込む

ストレスオフな食事の方法というと、「何を食べたらいいの?」という食べるものの中身、種類が気になる方が多いかもしれません。でも、まず大事にしたいのが、何を食べたときにでも心がけたい「よくかむ」という習慣です。

現代の生活は慌ただしく過密で、ランチタイムも「スマートフォンの画面を見ながらパパッと」というパターンもよく見られます。そんなとき、私たちは「食べ物をしっかりかむ」という行動を忘れがちですが、実はそれによって体は悲鳴をあげているのです。

そもそも食べ物は私たちの体にとって“異物”です。口から喉、食道、胃、腸、肛門まで、人間の体の消化機能は1本の「管」の形をしていて、その管を介して栄養分を吸収したり、不要な物を排出したりしています。「よくかむ」というアクションは、もともと異物である食べ物を、体の外側から内側へスムーズに取り込むために欠かせない役割を担っているのです。

■よくかむ人は体の機能も長持ちする

「そしゃく」が私たちの体にどんな役割を果たしているのか、おさらいしてみましょう。

第一の役割は、やはり消化を助けること。食べ物を細かく砕き、小さくすることで、胃腸の消化活動の負担を減らし、栄養の吸収を高めます。かむことで活発に分泌される唾液にも消化酵素が含まれ、胃腸の働きをサポートします。

第二の役割は、若返りです。唾液には成長ホルモン分泌を活性化する作用もあります。成長ホルモンは傷ついた細胞を修復する働きがあるので、肌や髪を美しくするのにも一役買ってくれるのです。

第三の役割は、脳の活性です。よくかむことで脳神経に刺激を与え、血流も促進して、脳機能を高めると言われています。老年期の管理栄養指導の現場でよく言われるのは、「よくかむお年寄りは体も脳も元気」ということ。同じ栄養素の摂取でも、点滴で吸収するのと、口から食べてかんで吸収するのとでは、体の衰え方には違いが見られます。また、幸福感や心の安定につながるストレスオフ物質のセロトニンは、一定のリズム運動によって分泌が活性化されるため、よくかむことでリラックス感が高まることも期待できます。

■最初の一口目のごはんを50回かむ、から始めよう

特に、ごはんはよくかむことで太りにくくなります。これらのメリットを最大化するためには、ごはんの甘みが出るまでよくかむこと。とはいえ、食事中ずっと意識するのはなかなか難しいというのが現実かもしれませんね。であれば、まずは「最初の一口だけでも50回」にトライしてみましょう。

最初の一口だけでもしっかりかめば、唾液の分泌スイッチが入りやすくなり、何もしないよりはその後のそしゃく回数が増えるはず。よくかんで食べると、お腹がもたれることなくスッキリと過ごせるようになります。胃腸がハードワークにならないので疲れにくく、体調がよくなる実感を持てる人は多いようです。ぜひ次の食事からトライしてみてください。

取材・執筆:宮本恵理子 監修:柏原ゆきよ

柏原ゆきよ

柏原ゆきよYukiyo Kashiwabara

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管理栄養士 / 一般社団法人日本健康食育協会代表理事
4万人以上の食サポートの経験から、日本人の体質とライフスタイルに着目し、お米(雑穀米)を主軸に「しっかり食べて太らないカラダづくり」を目指す独自のメソッドを確立。認定資格講座「健康食育マスター講座」を主宰し、食育分野の人材育成に注力。著書『食べて飲んでおなかからやせる』(かんき出版)他多数。

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