疲労の正体は自律神経のサビつきだった!【ストレス性疲労をオフしよう②】

東京疲労・睡眠クリニック院長の梶本修身先生にお話をうかがう連載。前回は、“隠れ疲労”について触れましたが、第2回では疲労の正体に迫ります。「それって、体育の授業で習った○○が原因なのでは?」そう思われた方には、ちょっと驚きの新事実が。女性ならばシミ・シワを引き起こす原因の一つでおなじみの、あの物質こそがカギを握っていたのです。

■「疲労の原因は乳酸」の誤解

運動をして疲れるのは「筋肉に乳酸が溜まるから」と、子どもの頃に聞いた、あるいは学んで記憶している人は多いかと思います。しかしこの乳酸の疲労原因物質説、あまり知られていませんが、近年の数々の研究によって誤りであることがわかりました。では、本当の原因は何か? それは「活性酸素」です。呼吸により取り込まれた酸素が体内で変化し、他の体内物質を酸化させるパワーが強力になった酸素の総称を、「活性酸素」と呼びます。

体内に取り込まれた酸素は、約1~2%が活性酸素に変化するため、呼吸をしている以上は体内で発生し続けています。例えば免疫細胞の白血球は、活性酸素を放出することでウィルスなどの敵を攻撃して私たちを守っていますが、体にとっていい影響ばかりではありません。「シミやシワなど肌老化を招くもの」、あるいは「生活習慣病を引き起こす」として広く知られているように、その強力さゆえ、過剰に発生すると体を作るために必要な細胞までも酸化させてしまうのです。

■疲労の正体、それはサビついた自律神経が発するアラート

朝出がけに子どもがぐずって遅刻しそうになった、会議でいやなことがあったなど。イライラを紛らわせようとネットサーフィンをしていてこの記事にたどり着いた方。今脳内では、まさに活性酸素が発生中かもしれません。ストレスを受けて自律神経のバランスが崩れ、片翼である交感神経が興奮すると、脳では大量の酸素を消費し、その分神経細胞内で活性酸素が大量に発生します。すると、何が起こるか。自律神経細胞の酸化、言い換えれば“サビつき”です。

屋外で雨風にさらされていた自転車のギアがサビて、動きが悪くなった状態と言えばイメージしやすいでしょうか。自律神経は、呼吸や心拍など、ヒトが生きる上で重要な機能の司令塔です。対人関係、強度な運動、気候などさまざまな外的ストレスによりその中枢がサビつき、機能が低下すると、「これ以上のストレスや体への負荷は、体にとって危機」であるという信号を発信。それがさまざまな不調となって心身に現れます。このアラートこそが「疲労」の正体であり、自律神経疲労=ストレス性疲労そのものなのです。

取材・執筆:オフラボSTAFF 監修:梶本修身

『寝ても寝ても疲れがとれない人のためのスッキリした朝に変わる睡眠の本』(PHP研究所)

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梶本修身

梶本修身Osami Kajimoto

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東京疲労・睡眠クリニック院長 / 医師・医学博士
大阪市立大学医学部疲労医学講座特任教授。産官学連携疲労定量化及び抗疲労食薬開発プロジェクト統括責任者。『すべての疲労は脳が原因』(集英社)は、シリーズ累計18万部を超えるベストセラー。ニンテンドウDS「アタマスキャン」では脳年齢ブームを起こす。「ホンマでっか!?TV」「たけしの家庭の医学」などTVにも多数出演。

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