月経前症候群(PMS)を睡眠から考える【女性シフトワーカーのための「自間」の使い方③】

働く女性に多くみられる月経前症候群(PMS)。月経前にイライラしたり、気力がわかなくなってしまうことはありませんか? 実は、月経のリズムは睡眠のリズムと深く関係。ベスリクリニック睡眠外来の菅原洋平先生に、その理由とイライラの悪循環に陥らないための方法を教えていただきます。

■月経リズムと睡眠の共通点「体温」を意識する

まずは月経のリズムについて簡単におさらいをしておきましょう。
月経から排卵までは卵胞期と呼ばれ、エストロゲンが上昇します。この時期は基礎体温が低いです。そして排卵から月経までは黄体期と呼ばれ、プロゲステロンが上昇します。この時期は基礎体温が高いです。

さて、睡眠の質に重要なのが内臓の温度である深部体温。人間は、深部体温が高いほど元気でハイパフォーマンスになり、低くなるほど眠くなります。深部体温には、1日のうちで上がったり下がったりするリズムがあります。これは深部体温リズムと呼ばれ、起床から11時間後に最高になり、起床から22時間後に最低になります。

◾️寝る前、深部体温が下がりにくい月経前の黄体期は要注意

ぐっすりと深く眠るには、眠りはじめの深部体温が急激に下がる必要があります。
この深部体温のリズムが月経のリズムの影響を受けます。基礎体温が高くなる黄体期では、昼間の深部体温が上がりにくく、夜間に下がりにくくなります。昼間は元気がなく眠くなり、夜は寝付きが悪くなったり、深く眠れなくなるのです。月経後卵胞期にさしかかり基礎体温が下がれば、睡眠中の深部体温も下がるようになり睡眠の質は改善します。

月経リズム

私は普段、睡眠外来を担当していますが、睡眠のリズムが整っていくと月経のリズムが整うことがよくみられます。月経のリズムに睡眠のリズムが影響されるように、睡眠のリズムにも月経のリズムは影響を受けるのです。ということは、月経前の不快な症状に対処するには、普段の睡眠のリズムを整えることが大切です。そうは言っても、忙しい中で睡眠時間を確保するのは大変なもの。そこで睡眠のリズムを整えるために最低限おさえておくポイントを知っておきましょう。

■休む場所と眠る場所を別にして、ベッドを眠りの「聖域」に

私たちの脳は、場所と行為をセットで記憶します。ベッドで横になってスマホを使っていると、ベッドは画像を見る視覚野を使う場所だと記憶します。すると、ベッドに行く前からスマホを使いやすいように準備して臨もうとします。ベッドは睡眠という作業をする場所なので、これは間違った記憶です。

月経前の調子が悪いときには、眠りはしないけど、だるくて横になりたいときがあると思います。眠らずに休みたいときにはソファなどベッド以外の場所にしてみましょう。そしていざ睡眠をとるときだけベッドに入る。こうすることで、脳に間違った記憶をつくらずに済みます。ベッドを眠りの「聖域」にすること。これだけで不調のサイクルから脱却できるはずです。

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執筆・監修:菅原洋平

菅原洋平

菅原洋平Yohei Sugawara

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作業療法士・ユークロニア株式会社 代表 / ベスリクリニック睡眠外来担当
国際医療福祉大学卒業後、作業療法士免許を取得。国立病院機構で脳のリハビリに従事後、睡眠改善をもとにした健康や人材開発のコンサルティングを行なうユークロニア(株)を設立。ベスリクリニック(東京都千代田区)で臨床も行っている。著書『脳にいい24時間の使い方』(フォレスト出版)他多数。雑誌、テレビでも注目を集める。

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