現代の日本は「疲労大国」。平成14年に厚生労働省が行った「労働者健康状況調査」では、なんと働く男女の7割以上が「疲れている」と感じているのだとか。オフラボでは、ストレスがキャパシティを超過し、心身に蓄積した疲労状態を「ストレス性疲労」と定義しています。連載「ストレス性疲労をオフしよう」では、疲労研究の第一人者である東京疲労・睡眠クリニック院長の梶本修身先生にお話をうかがいます。
■疲労の前の2つのサイン
日本疲労学会では「一般に運動や労力などの身体作業(運動)負荷あるいはデスクワークなどの精神作業負荷を連続して与えられたときにみられる、身体的あるいは精神的パフォーマンス(作業効率)の低下」と、疲労を定義しています。「仕事中に考えがまとまらない」「ついぼんやりしてしまう」、あるいは「体がだるい」「肩がこる」など、さまざまな変化や症状を経験している現代人は多いでしょう。
しかし「疲労」は、実はある程度蓄積されてから起こります。長時間デスクワークや勉強をしていて「飽きてきたな」これが最初のサイン。休憩する、リフレッシュするなど対応しないでいると、次にやってくるのは「眠気」です。集中しているつもりなのに、あくびが出ること、ありますよね。脳は数千を超える神経細胞の塊で、複雑に連携し合って働いています。同じ回路だけ集中して負荷がかかると、休息を促すように飽きたり眠くなったりするのです。脳が発しているそんなサインを毎日のようにやり過ごし、フル回転している神経細胞を十分に回復させないでいると……心身の不快感や痛みといった「疲労」が生じます。
■達成感があれば疲れはなかったことに!は、ならない
例えば、時にクライアントに嫌味をいわれたりしながら、それでも徹夜続きでがんばったプロジェクトがあるとします。あなたの体も心も、当然ボロボロです。でも、そのプロジェクトが大成功をおさめ、「よくやった!」と褒められたりしたら、きっと疲れも吹っ飛んでしまうことでしょう。でもそれ、そう感じているだけだと気づいていますか?
疲労していても、それを感じられない。そんなギャップが生じる原因は2つあります。
第2回で詳しくお話ししますが、「疲労が起こっている」のは、脳内の自律神経中枢です。そして「疲労を自覚する」のは、眼窩前頭野と呼ばれる場所です。このように、同じ脳内でも領域が異なるため、ギャップが生じるというのが一つ目。そしてもう一つは、先ほどの例のように、やりがいや達成感が疲労感を覆い隠してしまう錯覚です。研究者の間では、これを「疲労感のマスキング」と呼んでいます。平易に言い換えれば、「隠れ疲労」です。昨今大きな社会問題となっている過労死も、隠れ疲労が積もり積もって起きているケースがあります。「疲れた」と感じなければ疲れていないのではなく、本当は疲れているのに自覚できていないだけ。念頭に置いて、「飽きた」や「眠い」のサインを意識してみてください。
取材・執筆:オフラボSTAFF 監修:梶本修身
『寝ても寝ても疲れがとれない人のためのスッキリした朝に変わる睡眠の本』(PHP研究所)
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