もし、仕事中や授業中にガムを噛んでいる人がいたとしたら、きっと周囲の人は眉をひそめて「行儀が悪い」と注意することでしょう。しかし、いさめるどころか「積極的に噛もう!」と推奨している企業があります。“お口の恋人”でおなじみの株式会社ロッテです。その理由は? 実は“噛むこと”には驚くべき効果があるのです。
■噛むことによりストレスや疲労が軽減
フルタイムで働く平均年齢29歳の大学職員126名(男性39名、女性87名)に行ったこんな実験があります。
被験者を「ガムを噛むグループA」と「ガムを噛まないグループB」にランダムに振り分け、Aにはガムを好きなように噛みながら一日仕事をしてもらい、仕事の幸福感とパフォーマンスに与える影響をBと比較。実験の前後に「仕事上のストレス」「疲労」「不安感」「気分の落ち込み」「不注意」「仕事の遅れ」「認知上の問題(勘違い)」の7項目のアンケートに答えてもらいました。結果、1日ガムを噛みながら仕事をすることで、仕事上のストレスや疲労感がうすれ、「不注意」「仕事の遅れ」や「認知上の問題(勘違い)」が低くなることがわかったというものです。
この結果でオフラボが特に注目したのが、「仕事のストレス」「疲労」「不注意」です。
噛むことによる「仕事のストレス」「疲労」の低下は、そのままストレスオフへの有効性が示唆された結果と言えます。また「不注意」の低下は、違う視点で見れば集中力の向上とも取れ、心地よくやる気を高める手立てとして、噛むことの効果が期待できると言えるでしょう。
■仕事上の勘違いだけではない、認知機能への噛むことの影響
また「認知上の問題(勘違い)」は仕事の大きなミスにつながる可能性がありますが、それ以外の認知機能にも噛むことが影響を及ぼすことが分かってきています。
放射線医学総合研究所の小畠研究室と小野塚實教授らのMRIを使った実験で、噛む行為が脳を活性化すること、また認知機能の一部である記憶の中で、脳が得た情報を一時的に保ち、処理する「ワーキングメモリー(作業記憶)」という機能に作用することが明らかになりました。
スマホしかり、食事しかり、往々にして、“ながら○○”はよくないと言われますが、噛み“ながら”の仕事や勉強は、どうやら別もののよう。仕事の最中は難しくても、食事の際はもちろん、通勤時や休憩中などを利用して、噛むことを習慣として取り入れてみてはいかが?
取材・執筆:オフラボSTAFF 監修:噛むこと研究室