企業取材

リアルを超えた感動を。エンタテインメントな星空をつくるコニカミノルタプラネタリウム

「子どもの頃に行ったきりだなぁ」そんな人はきっと驚くことでしょう。今、プラネタリウムが密かなブームです。その理由は、感動を呼ぶストーリーと、心が透き通っていくようなストレスオフの効果。単なる天体観測から、大人のための極上のエンタテインメントに劇的に進化させたコニカミノルタプラネタリウム株式会社をご紹介します。

■1957年、初の国産プラネタリウムが完成

世界で初めて近代的なプラネタリウムが誕生したのは、1923年のドイツでのこと。それから34年後の1957年、日本初のプラネタリウムを完成させたパイオニアが、コニカミノルタ株式会社です。現在の前身である千代田光学精工株式会社の社長だった田嶋一雄が大の星好きだったことからプラネタリウム開発に着手し、国産プラネタリウム1号機を完成させました。
以来、自社の光工学の技術を応用し、世界でも数少ないプラネタリウムメーカーとして圧倒的にリアルな星空の再現にチャレンジ。その結実の一つが自社で運営するプラネタリウムシアターです。

左:国産プラネタリウム1号機(1957年) 右:国産初のプラネタリウムが公開された科学大博覧会(1958年) / 画像提供:コニカミノルタプラネタリウム

 

■人気アーティストとのコラボなど画期的なプログラムが人気に

コニカミノルタプラネタリウムは、プラネタリウム機器メーカーとして国内で唯一、プラネタリウム施設を直営しています。これが意味することは何か? それは、上映するコンテンツを自由に企画できるということ。元来プラネタリウムは「星空を学ぶ」という教育的側面が大きく、そんな記憶から「子どもの頃以来、足を運んでいない」という人も多いのではないでしょうか。
コニカミノルタプラネタリウムでは、2004年にオープンした池袋「コニカミノルタプラネタリウム“満天”in Sunshine City」を皮切りに、「コニカミノルタプラネタリウム“天空”in 東京スカイツリータウン®」、そして有楽町「コニカミノルタプラネタリアTOKYO」と現在までに東京都内で3館を運営していますが、ストーリー性にあふれたプログラムが、最新鋭のマシンによる迫力の星空をさらに魅力的にしています。

2015年の「コニカミノルタプラネタリウム“満天”in Sunshine City」リニューアルの際には、日本の音楽シーンを牽引するバンド、サカナクションとコラボレーション。サラウンド化したサカナクションの曲の数々がドームを包み込み、ナレーションを同バンドのボーカルである山口一郎さんが担当するというスペシャルなプログラムが上映され大きな話題となりました。

■「プラネタリウムは癒やされる」を解き明かす取り組みも

多くの人の記憶にあるプラネタリウムの概念を超え、星空の魅力を拡大させ続けているコニカミノルタプラネタリウムですが、近年力を入れている取り組みがあります。プラネタリウムが持つ、癒やしの効果の実証です。
以前から「プラネタリウムに行くと癒やされる」という声は多くありましたが、それは個々人の感想であり、科学的なエビデンスはありませんでした。そこで2017年、自律神経を測定・分析するWINフロンティア株式会社らとともに、プラネタリウムのどんな演出が癒やしを感じさせているのかを検証。20~40代の働く女性20名に、プログラムA「フランス 星めぐりの空で」(一般プログラム)と、2種のアロマを交互に用いたプログラムB「きみを乗せたこの列車の向かう先には美しい星空が待っている」(ヒーリングプログラム)を体験してもらい、それぞれシーン1(開始直後)、シーン2(開始10分後)、シーン3(終了10分前)、シーン4(終了直後)の体表温度や自律神経(交感神経)の数値を比較しました。

プラネタリウムプログラムの検証結果(体表温度の傾向)

 

交感神経の活性度は、値が低下した場面と上昇した場面をそれぞれ抽出しました。
まず低下した場面(リラックス状態)は、プログラムAの雄大な自然の映像場面、プログラムBでは、夕暮れや夜空を中心とした映像場面や流れ星の場面など。一方、活性度が高まったのは、プログラムA・B共通で光があふれる、光の動きが見られる場面、プログラムAの朝焼けの映像場面や音楽が変わった場面、プログラムBでは星空の回転が行われた場面や、アロマの香りがオンになった後の場面でした。

今回の検証では、体表温度が上昇している状態(末梢血管が拡張している状態)、交感神経の活性度が低い状態を「リラックス効果が高まっている」として結果を考察しました。体表温度はどちらのプログラムも開始前より終了後に有意な温度上昇がみられたことから、プラネタリウム鑑賞によってリラックス効果が得られ、さらにアロマを用いたプログラムBのほうが温度上昇のタイミングが早く上昇幅が大きかったことから、よりリラックス効果が高い可能性が示唆されました。
交感神経の活性度は、比較的ゆったりとしたシーンでは低下し、光を発したりアロマが出現するシーンでは高まりましたが、活性度の高低で心拍数に差がなかったことから、活性度が高まっていても、それは五感に集中した、心地いい緊張状態であると考えられます。

■検証の結果を受け、新たなプログラムも登場

この検証の結果を受けて、2019年にはより深いリラックスを提供すべく新たなプログラム「Milky Way & The Moon —忘れられない、天の川へ—」も誕生し、同年11月までに20・30代の女性を中心に約9万人を動員。リピーターも多い人気作となりました。
コニカミノルタプラネタリウムでは、今後もプラネタリウムと癒やしの研究を続け、最新鋭の技術とともにさらに魅力的なプログラムを提供していくとのこと。都会で暮らす人々のオアシスとして、ますます期待が高まります。

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参考文献:江尻綾美, 駒澤真人, 笠松慶子 “プラネタリウム鑑賞時のリラクゼーション効果の検証”(2017)

取材・執筆:オフラボ 監修:コニカミノルタプラネタリウム