ストレスが原因で起こる「心因性発熱」研究の第一人者、国際医療福祉大学病院の心療内科部長・岡孝和先生にお話をうかがう連載も最終回です。今回は、子どもの心因性発熱について。時代の変化につれ、友だちとの関わり方や学校の環境もさま変わりしている今、ストレスは、大人だけの問題ではありません。子どもは言葉で伝える力が発達していないため、保護者や教師など、周囲の大人たちが気を配ってあげる必要があります。
■「いい子」が発症しやすい子どもの心因性発熱
「ゆとり教育」後に教育制度が見直されたり、授業にもデジタル化の波が押し寄せたり、スマホやSNSの登場で、友だちとの付き合い方が変わったり。ここ数十年で、子どもたちを取り巻く環境は大きく変化しています。そんな中で増えているのが、ストレスに起因する心因性発熱です。
大人もそうですが、子どもで発症しやすいのは「いい子」です。周囲の期待に応えたいと思うあまり、本人のキャパシティ以上にがんばり過ぎてしまうことでストレスがかかり、発熱するケースです。大人と比べ、子どもは40℃近い高熱になることも珍しくありませんが、ストレス状態から離れると平熱に戻るため、見た目ではそのつらさ(重症感)がわかりにくく、また「登校すると高熱が出る」あるいは「試験前など特定のシーンで発熱する」のように、原因が特定できることはまれ。多くの場合は、子どもと向き合い、丁寧にカウンセリングして原因と解決法を見つけていくことになります。
■発達障害児に見られる心因性発熱
また岡先生によると、発達障害を抱える子どもの心因性発熱が最近増えているのだとか。いつもと違うことが起こるとパニックになってしまったり、匂いや音に敏感だったり。繊細な感覚を持った発達障害の子どもたちは、どうしてもストレスを受けがちです。発達障害の専門の先生とよく相談しながら、子どもの適応しやすい環境を整えてあげる、緊張感や不安感を減らしてあげることが、心因性発熱の治療にもなります。
■子どもに多い詐熱(さねつ)について
子どもの心因性発熱と見分けが難しいものに、「詐熱(さねつ)」があります。同じように発熱を訴えても、心因性発熱は実際に体温が上昇しているのに対し、詐熱は体温計を操作するなどして“熱があるように見せかけている”ものであり、実際には発熱していません。しかしその子には、「熱がある」と偽ってでも、学校に行きたくない、友だちに会いたくない理由があるかもしれないのです。仮病だと叱らず、やさしく悩みを聞いてあげることが大切です。
■SOSのメッセージである発熱を見逃さないで
学校だけでなく家庭内でも、両親の不仲、弟や妹が生まれた、厳しいしつけなど、ストレスになりうる要因がどこにでもあるのは大人と同じです。子どもは、経験も言葉も未熟。ですから、自分が置かれている状況やストレスの原因を特定したり、うまく説明することができません。そんな中で起こる心因性発熱は、言わばSOSのメッセージです。普段明るく活発に見える子でも「うちの子は問題ない」と思わず、発熱を訴えたら、心の内側も気にかけてあげましょう。
取材・執筆:オフラボSTAFF 監修:岡孝和
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