食生活や入浴もさることながら、ストレスオフに重要な生活習慣といえば、やっぱり睡眠が第一。オフラボのさまざまな調査でも、低ストレスな男女は、ただ眠るのではなく睡眠の質を大切にしていることがわかっています。東京疲労・睡眠クリニック院長の梶本修身先生いわく「睡眠は、疲労回復の唯一の方法」と聞けば、なおのこと。がんばった今日の「疲れた」を、眠りでしっかり回復させましょう。
■「ストレス!」な時だけにあらず。現代人は常に緊張状態にさらされ疲れている
朝の通勤ラッシュに始まって、会社に着けば同僚たちと共にデスクを並べ、クライアントと会い、また帰宅ラッシュの電車に乗り込んで家へと帰る。都心で暮らす人にとっては「当たり前」のことであり、仕事を持っていなかったとしても、日々のママ友づきあいや近所づきあいなど、現代人の毎日は人間関係に支配されていると言っても過言ではないはず。それだけではありません、家から一歩外に出た瞬間から、他の歩行者や信号を気にしたり、駅のホームで歩く場所にも気を使う世の中です。こんな状況、太古の人々は想像しなかったでしょう。
自分の居場所を出て、いわゆるアウェイな場所にいる時。その多くの時間、人は緊張にさらされている状態=交感神経が興奮し続けている状態にあります。自然界で言うなら、どこから敵が襲ってくるかわからないサバンナで、群れを離れたライオンが獲物を捕りに行っているような状況ですが、彼らが狩りをするのは、せいぜい1、2時間程度です。それに比べて現代人は8時間以上もずっと緊張状態が続くわけですから、これはもう疲れないわけがない。生活スタイルはここ100年程度で大きく変わり、食生活などが変化するにつれ体格は立派に、寿命は長くと進化を遂げてはいます。しかし、自律神経機能においては遺伝子レベルの話であり、50万年にも及ぶ人類の歴史の中で、たかだか100年程度で変わるものではないのです。
■疲労の救世主、それは「睡眠」
最初にお伝えしましょう。疲れを溜めないように生活する工夫はできても、生じてしまった疲労を回復できる唯一のチャンスは睡眠しかありません。その理由をご説明しましょう。
先ほどお話ししたように、人は日中の多くの時間、緊張状態にあり、自律神経の調節機能はそんな状況を収めようと常に活発に働いています。するとどうなるか? 自律神経中枢で細胞を酸化させる活性酸素が発生し、体内に疲労因子FF(ファティーグ・ファクター)と呼ばれるタンパク質が増加します。これが警告となって心身に「疲労」を感じさせ、休息を促すわけですが、同時に体内では疲労回復因子FR(ファティーグ・リカバリー・ファクター)が発生。酸化・損傷した細胞の修復にかかります。ところが疲労が蓄積すると、FRによるリカバリーが追いつかなくなるのです。
■夜は交感神経の分担を減らす心掛けを
もうおわかりでしょう。眠っている間は日中のさまざまな緊張感から解放され、自律神経機能が活発になることはありません。また女性ならば肌への害の話でご存知かと思いますが、これからの季節に特に気になる紫外線も、体内で活性酸素を発生させる原因の一つです。夜の睡眠中は太陽光を浴びることもありませんから、そういった意味でも、睡眠が疲労の回復の手立てであり、疲労回復因子であるFRが十分に分泌される時間なのです。
「いびきをかく」「何度も起きて寝付けない」など、睡眠がうまくとれていない人は、疲労が回復できなければ心身の不調はさらに悪化します。「睡眠をとる」だけでなく、疲労を回復できる質のいい眠りのために、寝具や照明など睡眠環境作りも大切です。眠る直前までスマホを触っているというのは、もちろんNG。もう一度言いましょう、睡眠は溜まった疲労を回復させる唯一の手立てです。ベッドに入って目を閉じるその瞬間まで、夜は交感神経の分担を減らすことを心掛けましょう。
取材・執筆:オフラボSTAFF 監修:梶本修身
『寝ても寝ても疲れがとれない人のためのスッキリした朝に変わる睡眠の本』(PHP研究所)
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