疲労研究の第一人者である東京疲労・睡眠クリニック院長の梶本修身先生の連載「ストレス性疲労をオフしよう」も今回が最終回です。これまで、疲労の正体や回復法などさまざまなお話をうかがってきましたが、最後は、疲れを溜めないためのちょっとした工夫や、気の持ち方について。今の働き方やコミュニティとの付き合い方、そして休み方を見直してみませんか?
■「連れだって〇〇」が疲労を生む
仕事中のお昼休憩、同僚たちと「気分転換にみんなでランチ」という人も多いでしょう。子育て中の方なら、保育園に預けた後に、みんなでお茶しに行くことが日常になっているかもしれませんね。そこで質問です。それ、本当に「気分転換」になっていますか? ぎゅうぎゅう詰めの通勤電車、仕事中、ママ友づきあいなど、四六時中誰かと関わり合っている現代人の生活。こんなに多くの人と、しかも狭い空間の中で接することは大昔では考えられませんでした。またランチの例で言えば、「連れ立って○○する」は、日本人特有の気質というのもあるかもしれません。しかし太古から脈々と受け継がれてきた遺伝子レベルの話で言うと、どんなにストレスを感じていないようでも、他人との関わり合いの頻度や時間が増えれば増えるほど自律神経は緊張し続け、気づかぬうちに疲労につながっているのです。
■「休憩をとる」と「休息する」の違い
連載の第4回でお話ししたように、一度生じてしまった疲労は睡眠でしか回復させることはできませんが、日中も、積極的に「休息」することが疲れを蓄積させない予防になります。では、ここで言う「休息」とはどんな状態でしょう。「休憩をとればいいんでしょ?」ちょっと違うかもしれません。なぜなら、仕事や家事の手を休めても、例えばスマホゲームに熱中していては、交感神経の興奮は収まらないからです。
実践して欲しい休息は、お昼休みなどを利用して、たとえ5分間でも「一人になって、何もしない時間を過ごす」ことです。会社の中なら、空いている会議室を利用したり、あまり居心地がいいとは言えないかもしれませんが、トイレの個室という手もあります。会社帰りなら、インターネットカフェやカラオケ店もいいのではないでしょうか。以前ならば喫茶店だったのかもしれませんが、今は仕事の合間の休憩に利用する人が増えているようです。
■「グッジョブ!」成果を認め合う世の中に
最後にもう一つ、日本人ならではのお話です。日本では挨拶で「お疲れさま」と声掛けしますよね。でもちょっと考えてみてください。疲れていることが美徳というのは、果たして……? ほんの少し前までは“寝てない自慢”も当たり前でした。でも、この連載をここまで読んでくださった方ならば、睡眠がどれだけ大切かをおわかりいただけたかと思います。
疲れていないと仕事をしたことにならない、疲れている人ほど評価に値するという意識が、「お疲れさま」には込められているように感じます。しかし、スピード感をもって、働き方も休み方も見直されている今。仕事も、家事も、子育ても、疲れていることを賛美するのではなく、成し得た結果を称賛する「グッジョブ(Good Job)!」で前向きにいきませんか?
取材・執筆:オフラボSTAFF 監修:梶本修身
『寝ても寝ても疲れがとれない人のためのスッキリした朝に変わる睡眠の本』(PHP研究所)
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